2016.08.20
Sat

レッスンの心構え、本番の心構え

アメリカのチェリストで指導者のローレンス・レッサー氏(1938-)が、ヴァイオリンを中心とした情報サイトThe Violin Channelの記事で
「レッスンや本番前にどんなウォーミングアップをしたらいいですか?」
という質問に答えていて、これがとてもためになると思ったので。

ASK THE PROS | "Warming Up for a Lesson or Performance" - Cellist, Laurence Lesser [The Violin Channel, August 18, 2016]

レッスンの前のウォーミングアップと、演奏会本番前のそれとはまったく違うものです。 順に説明しましょう。

レッスンに行く前には、課題をよく練習しておくことはもちろんですが、 自分の目標に向けてどこを教えて欲しいか、よく考えておくことです。 もちろん、先生を満足させるように弾きたいとは思うでしょう。 しかし、先生と生徒が向かい合うレッスンで一番の妙味となる成果は、疑問や難しく感じるところを正直に話すことから得られることが多いのです。 本当に上手に弾いて「よくできました…じゃ次回は2楽章ね」というのは、いいレッスンだったとは言えません。 普通はそうなりませんが、悩むことはありません。先生はあなたを助けるためにいるのですから、あなたが求めているものを、あなたなりに表現すればいいのです。 教師としての経験の中で最もうれしい瞬間は、教師と生徒とが真に協力し合って何かができたときで、レッスンの目的はあなた自身が答えを見つけられるようにすることなのです。

本番前のウォーミングアップは全く違います。 本番前に難所を練習すると、自分を緊張させることになります。 演奏意図を見直すのは悪くありませんが、ボウイングやフィンガリングを直前に変えると自分で混乱を招きます。

役に立つと思うことが2つあります。 1つめは、哲学、あるいは心理学に属することかも知れませんが、 「(聴衆の)みんなはきょうどうしてあなたの演奏を聴きに来てくれたの?」と考えてみることです。 みんなはあなたを「やっつけてやろう」と思って来ているのでなく、 あなたがみんなにはできない何かを持っていて、その何かを与えてくれると思うから来てくれているのです。 そう考えると気持ちの大きさ(generosity)とも言える前向きな感情が湧いてきて、これからしようとしていることに自信が持てます。

もう1つは、弦楽器奏者として私が役に立つと思うことですが、 本番前にプログラムにない別の曲で、あまり速くない曲を何か弾いてみて「自分の音」を探します。 そうすると私は楽器とのつながりを感じることができ、これから弾く曲によく耳を傾けることができます。 自分が弾く曲に耳を傾けることができなかったら、どうしてみんなが耳を傾けたいと思ってくれるでしょう? 最後にすることは、大きな気持ちでステージに歩み出ることです。 あなたはこれから練習部屋とは全く違う「空間」に出ようとしているのです。

ぜひ試してみてください。あなたの役に立つことを願っています!

─ローレンス

[※拙訳。全文はこちら。]

ローレンス・レッサー氏は、長年ボストンのニューイングランド音楽院で多くのチェリストを育ててきた方で、 チェリスト・指導者として来日も多数。3年前亡くなったヴァイオリニスト、故潮田益子さんの夫でもあります。 「無伴奏チェロ組曲」を求めて ─ バッハ、カザルス、そして現代 単行本 エリック シブリン

また、近年バッハの無伴奏チェロ組曲について書かれた本「無伴奏チェロ組曲を求めて」の著者エリック・シブリンは、このレッサー氏の無伴奏リサイタルを聴いて感銘を受け、その後何年もかけてこの本を執筆することになった、そのきっかけになったチェリストでもあります[過去記事]。

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