2015.03.17
(Tue)

デュポールとナポレオン

最近弾いている「21の練習曲」のジャン=ルイ・デュポール(Jean-Louis Duport,1749-1819)は、 後に彼の名を取って“デュポール”と呼ばれるストラディバリウスのチェロを弾いていて、 そのチェロにまつわるナポレオン(1769-1821)とのエピソードが有名なのだそうです。

....彼[デュポール]は音楽院の教授に任命され、皇帝のソロ・チェリスト、皇后マリー・ルイーズの室内楽団のメンバーになり、立場上チュイルリー宮で催される内々のコンサートで演奏する機会も多かった。 そういう「内輪の集まり」での有名な話が残っている。
思いがけなくナポレオンが、いつものように拍車のついた長靴をはいたまま入ってきて、しばらく耳を傾けていたが、つかつかとデュポールのところへ歩み寄り、 彼から楽器を取り上げると、馬にまたがるように足をひろげて腰をおろし、デュポールのまねをしながら「これは一体どうやって持つんだね、ムッシュー・デュポール」と尋ねた。 自分の美しいストラディヴァーリが皇帝陛下の拍車で押し潰されているのを見たデュポールが「陛下!」とあまりに悲痛な声を出したので、ナポレオンは笑って楽器を彼に返した。 しかしすでに楽器には被害があって、その後みごとに修理されたにもかかわらず、この乱暴な取り扱いの名残として今も小さな傷が側板に残っている。
この楽器は後にフランショムの手にわたった。 彼はこれを二万五千フランで買い、その後セルヴェに売った。 彼の死後楽器は息子ジョゼフが相続するが、その未亡人はそれを百万フランで手放した。 現在はロシア生まれのチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの所有となっている。
[「名チェリストたち」東京創元社 1994 マーガレット・キャンベル著 山田玲子訳 amazon 強調は筆者]

このチェロは、現在はロストロポーヴィチの相続人が保有しているようですが[過去記事]、いつかこのチェロを受け継ぐ人が手に取ってみたら、まだどこかにナポレオンがつけたキズが残っているわけですね!

*** hayashi.jpg

上の話を読んで、チェリスト林裕さんが昨年開いたリサイタルシリーズのチラシを思い出さずにはいられませんでした[画像は公式サイトより]。チェリストが書き今は埋もれてしまった作品をとりあげたリサイタル。上のエピソードに引っ掛けたのかも知れない、という気がしてきました。

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タグ : ロストロポーヴィチ 

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