2014.10.14
Tue

カザルスのチェロが受け継がれた日

Tsidtsadze: 5 Pieces on Folk Themes - Popper: Tarantella, Op. 33
Amit Peled

少し前に、アメリカのチェリスト、アミット・ペルド(Amit Peled)が、パブロ・カザルスが弾いたゴフリラーのチェロ(Matteo Goffriller 1733年作)を受け継いで弾いているという話を書きましたが、彼がこのゴフリラーをマルタ・カザルス・イストミン夫人から貸与されるに至った経緯を、自身の視点で書いた記事がありました。

How I came to play Pablo Casals's Goffriller cello [opusmagazine.co.il 2014.09.17]

(おそらく2年前、2012年)7月のある日、アミット・ペルドはニューヨークで、1日に3本のチェロを試奏することになっていた。 朝は楽器商のところでストラディバリ、昼はマルタ夫人に会ってカザルスのゴフリラー、夜は元世界銀行総裁ジェームズ・ウォルフェンソン氏(1933- )に会って氏のガルネリ
A Global Life: My Journey Among Rich and Poor, from Sydney to Wall Street to the World Bank
James D. Wolfensohn

(このウォルフェンソン氏はアマチュアチェリストでもあるというので調べてみると、41歳のときジャクリーヌ・デュ=プレに習ってチェロを始め、50、60、70歳の誕生日に自身が理事をつとめるカーネギー・ホールでコンサートを開き、そこでヨーヨー・マとも共演したという──ガルネリのチェロを持っていることも考え合わせると──同じアマチュアチェリストとして許しがたい経歴の持ち主…[※後日追記]

この3本を試奏したときのアミット・ペルドの心の動きが、文章からよく伝わってきます。 特にチェロの歴史を塗り替えた偉大なカザルスのゴフリラーを弾く時、ケースを開けて楽器を触ることすらためらわれたこと、楽器からカザルスのパイプの香りがする気がしたこと、夢が叶ったという思いに遠く離れた母親のことを思ったことなど…。

チェロ奏者として楽器を選ぶのには、冷静な比較ができる環境ではなかったかも知れませんが[過去記事: 楽器選びについてアルバン・ゲルハルトが語る]、 提供者と奏者との「お見合い」の場でもあったかも知れません。 いずれにしてもチェロ奏者として「夢のような一日」だったことでしょう。

アミット・ペルドはこの数週間後、マルタ夫人とウォルフェンソン氏の両方から貸与の意向のメールをもらい、カザルスのゴフリラーを弾くに至ったわけですが、もう一方のガルネリのまろやかな音色も「これまで見た中で最も美しい女性のよう」と心に残っていて、ガルネリも「愛人」として弾けたらと密かに思っている…と正直な告白で結んでいました。

マルタ・カザルス・イストミン夫人とアミット・ペルド、そしてゴフリラーのチェロとの再会のようす(おそらく今年8月)。

[追記11.05] カザルスのチェロが引き継がれたことについて、ウォールストリート・ジャーナルに詳しい記事。引き継いでから、大がかりなオーバーホールが必要なことがわかり、マルタ夫人もこれを快く認めたといった経緯まで。
Pablo Casals’s Cello Gets a New Life[Wall Street Journal 14.11.04]

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タグ : パブロ・カザルス 

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