2012.01.04
(Wed)

ストラディバリ対モダンで大差なし?

正月番組に似た企画があったような気がしますが、ストラディバリやガルネリといったいわゆる名器とされるオールド・バイオリンと、近年作られたモダン・バイオリンとを他ならぬバイオリニストに聞き比べさせたところ、ほとんど区別できなかった、という実験結果が出たそうです。

バイオリン名器の音色、現代モノと大差なし? [読売 12.01.04]
In Classic vs. Modern Violins, Beauty Is in Ear of the Beholder [NYTimes, 12.01.02]

ストラディバリやガルネリとモダンの"高級"なバイオリンとを"経験豊富"なバイオリニスト21人に外観は見せずに聞き比べさせたところ、最も音が好まれたのはモダンで、楽器の年代や価格と音の良さとは相関が見られなかったとのこと。実際の研究論文はこちら[米National Academy of Sciences]。

この結果に対して上のニューヨークタイムズの記事では専門家が、狭い部屋でなくコンサートホールのようなところで実験しなければ「スーパーの駐車場でフェラーリを試乗するようなもの」、 英ガーディアンではチェリストのスティーブン・イッサーリスが「これで従来過小評価される傾向があったモダン楽器が見直されることになれば喜ばしい。しかし今回の実験には楽器の状態、弦、弓との相性、奏者が誰か、など条件に不明な点が多い」とコメントしたりしています。

なお、ニューヨークタイムズの見出しは"Beauty is in the eye of the beholder"(美は見る人の目の中にある=蓼食う虫も好きずき)ということわざのもじりでしょう。

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ところで、僕も昨年くらいからよく「そろそろ楽器を替えたら?」と言われるようになったのですが、(この記事とレベルは違うにせよ)基本的には「好きずき」だと思っていて(というか思うようにしていて)今弾いている中国生まれのチェロをまだしばらくは弾き続けようと思っています。いくらユーロが安くなったといっても、楽器は相当なお金がかかる。それよりも腕を上げることのほうが先決…

決定的だったのが数年前、N響のSさんが僕の楽器を手に取ってドボルザークの協奏曲の一節などを弾いてくれたときで、これが自分の楽器かと思うようなすばらしい響きにいつかこんな音が出せたらもう十分、楽器じゃなくて腕だ、と思ったというのがあります(これを話したときチェロ友だちの一人が「"ベスト・エフォート"を知ってしまったわけですね?」と言ったのが実に的確な表現だと感心しました)。

そんなわけで「楽器を替えたら?」は、「腕が上がったんじゃない?」と言ってくださっているのだと思ってありがたく承る(だけは承る)ことにしています。

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タグ : スティーブン・イッサーリス  チェロ道具 

コメント

NoTitle

こんにちは。
私が常々思ってることが書かれていて、思わずコメントです。楽器って弾く人によって全然違う音がしますよね。上手な人に弾いてもらうと、練習する励みになります。こんな音、出せるんだ、って。
ちなみにmy cello、一昨年の秋に某プロに楽器をごしごし(わかりますよね)してもらってから3ヶ月くらいは、全然別の楽器になってました。何も知らないいつもの師匠が驚いて思わず立ち上がっちゃったくらいに(笑)

2012/01/05 (Thu) 11:54 | paseri #- | URL | 編集

NoTitle

イッサーリスのコメントが目配りが効いていていいですね。
僕の先生はレッスンのたびにこちらの楽器で弾いてくれているので、買い替え欲が全くおきませぬ(笑)

2012/01/05 (Thu) 13:33 | たこすけ #- | URL | 編集

> paseriさん
こんにちは!コメントありがとうございます。さらに言うと、プロに弾いてもらうと楽器が「よく鳴るようになる」のも、ほんとうに楽器の状態がどこか変化しているのかどうか、実験で解明してほしいですねえ…

> たこすけさん
ありがとうございます。記事では省略しましたがイッサーリスは他にもストラディバリのチェロの特徴は「遠くに音が飛ぶ」ことで、演奏している自分が音が小さいと思うくらいがホールではちょうど良く、十分鳴っていると思うと聴衆にはうるさいようだと書いていて、ストラディバリで長年弾いている彼ならではのコメントだと思いました。
僕は勤め帰りにスタジオの楽器でレッスンを受けるので、自分の楽器を先生に弾いてもらえるなんてうらやましいです。

2012/01/05 (Thu) 21:55 | yoshi #mQop/nM. | URL | 編集

弘法は筆を選ばず

この話はよく出る話題ですが、弘法筆を選ばず,下手は筆を選べ,というのが私の結論です(^_^) 楽器をやる人で良い楽器を欲しくないなんて人はいるはずがないと思っていますが(^_^) ホントに欲しくないの?今の音で満足?その歳で上手になれば良い音になると思う?・・・良い楽器とはある意味時間を買ってるんです・・・悪魔のささやき

2012/01/05 (Thu) 22:29 | goshu #jHSMZ1/Y | URL | 編集

NoTitle

良い楽器ほど音の表現の幅が広い気がします。上手な方は既にそういう音が出せることを知っておらるのでどんな楽器でもその音を出せますが、私の様なものは出しやすい楽器の方がありがたいです。

2012/01/05 (Thu) 23:01 | vc_tomo #mQop/nM. | URL | 編集

> goshuさん、vc_tomoさん
長年弾いている「ベテラン」かつ楽器を替えた経験をお持ちのお二人からのコメントありがたいです。
お二人とはよく一緒に弾かせてもらって「さすがにいい音だなあ」と思うのですが、そこで「やっぱ、楽器だよなあ」とはあまり思わないのですが(^^;)
とはいえ、僕もこの先ずっと楽器を替えないかというと…そんなことはわかりません(^^;) 
今の楽器はまあ「悪くない」部類だと思っていて、プロが出してくれるほどではないにせよ、まだ出せていない「いい音」が出るのを楽しみに楽器と付き合って、そうやって人生の時間をつぶしても悪くはないかなと思っています。
いつの日か楽器を替えたいと思うとしたら、その楽器で自分が出せる音は「開拓し尽くして」しまった、飽き足らなくなってきた、壁に当たった、と感じてきたときでしょうか?
それよりも「いい音」というと、音量とか倍音とか絶対的な尺度で「いい音」というのもあるでしょうけど、こういう音に強いといった特長とか、「好み」の部分もあるのでしょう。「表現の幅」というのもそうかも知れません。
そのへんの「微妙な差」のために大金を注ぎ込んでも、と思うようになるとしたら(なるのかも知れませんが…)おそろしいことです(^^;)

2012/01/06 (Fri) 21:29 | yoshi #mQop/nM. | URL | 編集

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