2010.08.20
(Fri)

「葬送」

葬送 平野 啓一郎

平野啓一郎が2002年に発表した、ショパンとサンド、ドラクロワをめぐる歴史小説。 一部と二部とがあり、文庫版ではそれぞれ上下2冊、計4冊と長編。 膨大な史料調査に裏打ちされていることを感じさせ(二部下巻末尾に参考文献リストがある)おそらく晩年のショパンと彼をとりまく人々との交流・確執やそれぞれの胸の内は、実際これに限りなく近いものだっただろうな、と思わせます。

実は、まだ読んでいるのは第二部の途中なのですが、第二部上巻冒頭のショパンのパリでの演奏会シーンは白眉!当日のプログラムに沿ってショパンと人々の様子、そこで奏でられる音楽がおよそ100ページに渡って、 まるで著者がその場で見て聞いていたかのように再現されるのですが、そこにあるのは文字であって音楽ではないのに、音楽そのものよりも感動し興奮しました。他ならぬ「ショパン本人がそこで弾いている」からかも知れません。

むろん、ショパンの親友であり唯一ショパンにピアノ以外の楽器のための作品を書かせたチェリスト、オーギュスト・フランショームも善良な友人として登場します。上のパリの演奏会でも、フランショームはショパンとあのチェロソナタOp.65を弾いています(ただし当時第一楽章は長くて難解とサロンでの受けが良くなかったらしく、第二楽章スケルツォ以降だけを弾いたようです)。[追記参照]

第一部は、ドラクロワの創作上の葛藤とサンド家の愛憎劇が中心で、ショパンと音楽についてあまり出てこないのが待ち遠しいのですが、これはこれで楽しめます。

ショパンやこの時代の研究は相当豊富だとは思いますが、それらを元にこれだけの小説を、三島由紀夫を思わせる華麗な文体で、しかも二十代で書いてしまう著者の筆力には恐れ入るほかありません。
ショパン:伝説のラスト・コンサート 平野啓一郎 監修 EMIミュージックジャパン

追記1: また、このときフランショームが弾いていたチェロは、あのストラディバリウスの“デュポール”でこれは現代ではロストロポーヴィチが弾いていたチェロ。

追記2: このコンサートのプログラムを再現したCDが平野啓一郎氏監修のもと発売されているのを知りました。

追記3: さらにこのコンサートのプログラムを再現するコンサートも催されるそうです。平野啓一郎氏司会・朗読付き。
9月25日 神奈川県立音楽堂 ピアノ宮谷理香さん、チェロ江口心一さん
10月1日 白寿ホール ピアノ高橋多佳子さん チェロ新倉瞳さん

関連記事

タグ :  

コメント

ショパンのソナタ

情報(追記のコンサート情報)ありがとうございます~!
りかりんとたかこさんのソナタは前から聴いてみたかったんです。どっちも行きたいですね!

2010/08/31 (Tue) 17:26 | あい #- | URL | 編集

Re: ショパンのソナタ

> あいさん
追記に気づいてくださって、甲斐がありました。なかなか興味深い企画だと思うんですよね~

2010/08/31 (Tue) 19:40 | yoshi #mQop/nM. | URL | 編集

コメントの投稿


非公開コメント

トラックバック