2017.02.16
Thu

ゴフリラーのネックが壊れたとき

アメリカのチェリスト、マット・ハイモヴィッツ氏(46)が今月2日、誤って愛用のゴフリラーのチェロを壊してしまったときの苦い経験を米Strings誌のインタビュー記事で語っていました。

今月2日、カナダのモントリオールで若手チェリストにレッスンをしていたときのこと。スコアを見ようと立ちあがったハイモヴィッツ氏は、ゴフリラー1710年作のチェロを手にしたまま体のバランスをくずしてしまった…

このときハイモヴィッツの氏の頭の中では、とっさにこのままチェロの上に倒れ込むか?それともチェロを投げ出すか?の二者択一をしなければと考えたのだそう。 ハイモヴィッツ氏がしたのは後者で、投げ出されたチェロはネック部分が外れてしまったものの、もしチェロの上に倒れ込んでいたらチェロがバラバラに壊れていただろうとのこと。

その直後のハイモヴィッツ氏のFacebookの投稿。

もちろんハイモヴィッツ氏は大いにショックを受けるのですが、レッスンは最後までやり終え、ウィスキーを2杯ほどあおると、少し胸の傷みが和らいだのだそう…

その後、ゴフリラーのチェロはニューヨークの工房で半年間かけて修理されることになり、その間に使う代わりの楽器も見つかったのだそうです。

楽器の価値がだいぶ違うとはいえ、チェロを持って体のバランスを崩した瞬間の心の動きが、とてもよくわかる気がしました…気をつけないといけません。

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2016.08.26
Fri

トルルス・モルクが休演

Cello Concertos Truls Mork

イギリスのBBCプロムスで25日、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番を弾く予定だったノルウェーのチェリスト、トルルス・モルク(55)が、当日になって「病気」のため休演。代わりにロシアのアレクセイ・スタドラーがソリストをつとめて公演は行われたそうです。

病気の詳細はわかりませんが、スティーブン・イッサーリスはもう少し事情を知っているのか「高熱にやられて気の毒なモルク」とツイート。

トルルス・モルクは、2009年から2010年にかけて感染症が原因で演奏活動を休んだり、 復帰後もスキー中のケガで休演したりといったことがあり、すばらしいチェリストなのに不運が相次ぐチェリスト、ということで以前から気になっていました。

昨年10月来日してN響と共演した(R.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」)ときには問題なかったようですが、 今年に入って6月のノルウェーでのハイドンのチェロ協奏曲第1番の公演は、やはり病気を理由に休演になり、 アルバン・ゲルハルトが代演していました。

トルルス・モルクの今後が心配です。

(しかし、急遽休演というときでも代演する人が見つかるものなんですね。日頃から横のつながりがだいじ、ということでしょうか…)

25日、ロイヤル・アルバートホールでアレクセイ・スタドラーが急遽代演したショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番の演奏はこちらの20分過ぎから。 アンコールはバッハの無伴奏組曲2番プレリュードサラバンド[コメントで指摘いただいて訂正。感謝!]。演奏はヴァシリー・ペトレンコ指揮のロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団。

[追記] スタドラーは当日午後2時半にベルリン発、3時半ロンドン・ヒースロー着の飛行機に乗り、そのまま会場のロイヤル・アルバート・ホールに入り、リハーサルした後、7時半からの本番に臨んだのだそう[スタドラーのフェースブック, Slippediscなどより]。正に綱渡り…。

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2016.05.29
Sun

アップボウのハプニング

室内楽コンサート本番中のチェリストの失敗…今年4月13日、パリのルーヴル美術館オーデトリアムでの室内楽コンサートでドホナーニの弦楽三重奏のためのセレナードOp.10を演奏していたときのこと。

これだけならふつうのチェリストが人生に一度くらいは経験することかも知れませんが、これはコンクール優勝歴もあり、すでに国際的に活躍しているチェリスト、キアン・ソルタニ(Kian Soltani, 1992-, HP)が自分でフェースブックにアップしていたからおかしい。

演奏しながら自分たちで笑ってるし…

ソルタニは今年10月来日して、バイオリンのアンネ=ゾフィー・ムターとサントリーホールで共演したりしますね。

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2016.04.06
Wed

「パナマ文書」にチェリスト

大きなニュースにチェリストが登場することは少ないのですが… 国際的な報道機関が入手したタックスヘイブンに関するファイル(いわゆる「パナマ文書」)に、プーチン大統領の親しい友人のチェリストの名前があったのだそう。

サウジ国王・プーチン氏友人…租税回避地に関係会社[朝日 16.04.04]

カリブ海の英領バージン諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)に設立された21万余の法人に関する電子ファイルを、 南ドイツ新聞と非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が入手した。 中には、ウクライナのポロシェンコ大統領やサウジアラビアのサルマン国王、ロシアのプーチン大統領の友人らの関係会社の記録が含まれていた。

タックスヘイブンは、法人税や所得税の税率がゼロか極めて低い国や地域。脱税や資金洗浄の温床になっているとの批判も根強い。近年、多国籍企業や富裕層がタックスヘイブンを使って合法的に租税を回避することで各国財政が悪化しているとして問題化。乱用を防ぐためのルール作りが国際社会で検討されている。

今回ICIJが入手したのは、タックスヘイブンの会社設立などを手がけるパナマの法律事務所の膨大な内部ファイル。1977年から2015年にかけて作られた文書やメールで、バージン諸島やインド洋のセーシェル、英仏海峡のガーンジーなどにある会社の株主や役員などの情報が含まれている。

(中略)ICIJが注目するのは、ロシアのプーチン大統領の友人でチェロ奏者のセルゲイ・ラルドゥーギン氏。 同氏はタックスヘイブンの複数の会社の所有者となっており、これらの会社に資金が流れ込んでいた。 プーチン大統領の周辺で少なくとも20億ドル(2千億円余)が、タックスヘイブンの会社や銀行を行き来したと、結論づけている。

クレムリンの広報担当者はICIJの質問に答えず、ICIJの質問の一部を公表。「プーチン氏への攻撃を準備している」と非難声明を出した。…

このニュースを最初に英語で詳しく伝えたのは英ガーディアン。ICIJの記事はこちら

ラルドゥーギン氏の名前を聞いたことがあると思ったら、去年のチャイコフスキー・コンクールのチェロ部門の審査員のひとりでした[過去記事,公式]。

1951年生まれのラルドゥーギン氏は、'52年生まれのプーチン氏と歳も近く、ラルドゥーギン氏がレニングラード音楽院、プーチン氏がKGBレニングラード支部にいた70年代からの友情関係にあったようで、プーチン氏の長女の名づけ親にもなっているそうです。

チェリストとしてのラルドゥーギン氏の演奏。2013年、オーストリアの音楽祭で。曲はシューベルトのピアノ三重奏曲第1番。

余談ですが、ヴァイオリンを、よくコミカルな動画で笑わせてくれるアレクセイ・イグデスマンがまじめに弾いていて、ちょっとびっくりしました。

***

[追記8日] プーチン大統領は7日、会見でこの疑惑を否定。ラルドゥーギン氏について「保有する株式から得た利益を外国での楽器の購入に充て、楽器は国に寄付している」「しかし、利益が数十億ドルもあるわけがなくナンセンスだ」「このような友人がいることを誇りに思う」と擁護したそう[NHK, Tass英語]。
ロシアにはどれだけたくさん名器が揃っているんだ…とツッコむひとがいそう。

この件で恐れられるのはチェリストがスケープゴートにされて終わる展開だったけど、少なくともプーチン氏がチェリストとの友情関係を認めて擁護したことで、最悪の事態は避けられたのではないかと。

[追記11日] 英ガーディアンによると、ラルドゥーギン氏は疑惑発覚後初めて10日、ロシアのテレビニュース(おそらくこれ)に登場。若い音楽家たちが研鑽に励む様子を紹介し、彼らが使う楽器を海外から購入する資金の大半は、氏が集めた「寄付」によるものだと説明したそう。ストラディバリウスだというチェロを自ら取り出して弾いて見せる一幕も。

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2016.04.06
Wed

ケラスのコンサートが中止

スイス・ローザンヌで昨日5日夜、ジャン=ギアン・ケラスが出演することになっていたコンサートが、ホール天井からステージに複数の「石」が落下したため、安全上の理由から中止となったそうです。幸い負傷者は一人もいなかったそう[ケラスのFacebook投稿より]。

コンサートは、ローザンヌのホール Salle Métropoleで開かれる予定だったローザンヌ室内管弦楽団の演奏会で、ケラスはこの中で作曲家トーマス・ラルヒャーの新作チェロ協奏曲を初演することになっており、演奏会のもようはスイス公共放送RTSでライブ中継されることになっていました[追記: RTSでのインターネット放送は前日の4日の収録分が公開されていました。] ロベルト・シューマン : チェロ協奏曲 イ短調 op.129 | ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.63 (Robert Schumann : 3 / Jean-Guihen Queyras

RTSのニュースにあるホールの写真をみると、そう古い建物ではなさそうに見えますが…。とにかくケガ人がいなかったのが何よりですし、石が落ちたのがケラスが演奏しているときでなくてよかったです。

ジャン=ギアン・ケラスは、今年6月に来日して各地で公演予定。右は6月に発売のシューマンのチェロ協奏曲とピアノ三重奏曲のCD+DVD[amazon]。

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2015.12.22
Tue

エイリアン?

ロシアの女性が飛行機の機内で自撮りした写真をSNSにアップしたところ、見た人から「後ろにエイリアンが映り込んでいる!」「いや幽霊だ!」とコメントが殺到、驚いて女性が写真を見直すと、たしかにヒトの型をした、目がなく、光を放つ物体が映り込んでいた…

このニュースがイギリスの大衆紙デイリーメールなど複数のメディアで取り上げられていたのですが…
The most bizarre photobomb ever? Russian woman discovers GHOST ALIEN looking over her shoulder in passenger jet selfie [15.12.18 dailymail.co.uk]
alien.jpg

いや、これはどう見てもチェロケースでしょう…

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2015.11.21
Sat

「アナと雪の女王」のチェロ盗難

今月1日、アメリカ・ロサンゼルス近郊の駐車場から車が盗まれ、 このトランクの中にハリウッド映画の音楽の仕事をしているチェリストのチェロが入っていたことから、 地元の警察ではこの車とチェロの発見につながる情報提供者に1千ドルの賞金を用意して情報提供を呼び掛けているそうです [Latimes]。
アナと雪の女王 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド]

このチェロはAntonio Domenicelliという製作者の1714年の作であることを示すラベルが目印で、百万ドル(約1億円)相当とのこと。 CBSのニュースによると、映画「アナと雪の女王」の音楽の演奏でも使われたチェロだそうです。

今のところ、犯人が盗もうとしたのは車か、それともトランクの中のチェロか明らかでないようですが、もし車を狙った犯行だったとしたら、犯人は今頃ニュースを見てびっくりしているでしょうね…

[追記2016.01.24] 3ヶ月たった翌年1月になって近くの駐車場で盗難車が見つかり、中からチェロも無傷の状態で見つかったのだそう[LATimes]。

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2015.11.18
Wed

ヨハネス・モーザーもコンチェルトで弦を切る

なんだかこのところ本番中に弦が切れる話に敏感なせいか、よく目と耳に入ってくるのですが、ヨハネス・モーザーが14日、アメリカでクリーヴランド管弦楽団とショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番を演奏中、1楽章でC線が切れてしまったのだそうです。

モーザー自身のフェースブックページと見ていた人のコメントによると、モーザーは1楽章の後、オーケストラの首席チェロ奏者Mark Kosower氏のチェロと交換し、2楽章以降も完璧に演奏したとのことです。Kosower氏は他の団員の楽器を借りたよう。モーザーのチェロは1694年のガルネリ(Andrea Guarneri)、Kosower氏のチェロはモダンのもの。[※追記]

ヨハネス・モーザーがツイッターに投稿した写真:


Dvorak/Lalo: Cello Concertos

この前からこの話題をいろいろなチェロ仲間と話しているのですが、アマチュアで「本番中に弦が切れた」という経験をしたことがある人は、相当経験が長い人でも案外いないものだなという印象を持ちました。やはりプロならではということでしょうか。

独奏者の弦が切れたと言えば、チェロでなくバイオリンですが、五嶋みどりさんが14歳のときバーンスタイン指揮の下で1度ならず2度も弦を切りながらオーケストラの奏者の楽器を取って弾き切った話が有名ですね。

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2015.11.11
Wed

G線なしのソナタ

アメリカのチェリスト Hamilton Cheifetz氏が今月2日に開いた教会でのリサイタルから。ベートーベンのチェロソナタ3番の最終3楽章の演奏中 5分過ぎのところでG線が切れてしまったのにそのまま弾き続け、ついに最後まで弾き通してしまった!

[Hamilton Cheifetz氏自身がFacebookでシェアしていたので知りました]

151111.jpg G線が切れたあとも、G線より低いC線を使って何とかしのいでいるので、しばらくは聴衆に気づかれなかったと思いますが、最後の8分40秒頃には完全にG線がだらりと外れてしまっている!

151111-2.jpg 共演していたピアニストも気づかなかったらしく、終わってからびっくり。

Cheifetz氏は、ポートランド州立大学の教授で、かつてはインディアナ大学でシュタルケルに学んだチェリストであり、同じシュタルケルに学んだ堤剛先生のアシスタントをつとめたこともある方だそうです。

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2015.10.14
Wed

香港の地下鉄の楽器持ち込み規定その後

先月、香港の地下鉄MTRで音大生がチェロを持って乗車するのを拒否されたことに端を発し、 今月初めには抗議デモまであった問題について、 13日香港MTRが手荷物の持ち込み規定の見直し方針を発表したそうです[South China Morning Post 15.10.14]。

ところがこの見直しでは、 「タテ・ヨコ・長さの合計が170センチを超えず、最大の長さでも130センチを超えない」という現行の規定自体はそのままで、 この規定を超える楽器類を登録制とし、しかもラッシュ時間帯以外のみ持ち込むことができる…というものになるとのこと。

(一般的なチェロケースの高さは約135センチ…)

音楽関係者からは当然、この見直しでは不十分だと不満の声が上がっているそうです。 MTRは11月から数か月間、この方針に沿った運用を試行するそう。

香港のチェリストの方たちの不便を思うと気の毒ですね…。

参考までに、日本の例えばJR東日本では「タテ・ヨコ・長さの合計が250センチメートル以内、最大の長さが2メートル以内」 (JR東日本 旅客営業規則第308条) となっていて、他の鉄道各社もだいたいこれと同様ではないかと思います。

[追記15.10.30]
MTRは規定見直し試行の詳細を27日発表し、11月2日から4ヶ月間実施するとのこと。
これによると、大きな楽器を持ち込みが制限されるのは、平日の8時15分から9時15分までの時間帯。
登録(無料)して持ち込める楽器のサイズには上限が設けられ、タテ・ヨコ・長さの合計235センチ、最大の長さが145センチを超える楽器は持ち込むことができない─したがってチェロは登録すれば持ち込めるけど、コントラバスや中国の伝統的な琴などは持ち込めない─とのこと[Strad経由SCMP, MTR報道発表 15.10.27 英語 PDF]。

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