善福寺手帳

ぜんぷくじてちょう

一番聴かれているチェロ協奏曲その2

[ 2014/04/24 Thu] チェロと音楽

一番聴かれているチェロ協奏曲はどうやらドボルザークのチェロ協奏曲ロ短調op.104(ドボコン)のようだという話を書きましたが、 これは日本特有なのか?それとも世界共通か?…コメントをもらって面白いと思ったので調べてみました。

どこかの国のコンサートを広くカバーしたデータベースでもあればいいのですが、残念ながら適当なものが見つかりませんでした。 そこでその代わりに、アメリカのニューヨーク・フィルハーモニックのアーカイブを見てみました(公式サイトHistoryというところ)。 ニューヨーク・フィルのアーカイブは充実していて、創立した1842年から現在まですべてのコンサートの演目、指揮者、演奏者がわかるようになっているのです。 アメリカを代表するオーケストラの170年余りの歴史のデータなら、アメリカでの何かしらの傾向がわかるのではないか?

[注: ボストン交響楽団も同様にアーカイブを公開しているので(少し使い方が難しかったので後になりましたけど)その結果を文末に追記しました。]

主なチェロ協奏曲で、1842年から今日までにニューヨーク・フィルハーモニックのコンサートで演奏されたのは:
1. サン=サーンス 55回
2. ドボルザーク 54回
3. シューマン 48回
4. チャイコフスキー(ロココ) 30回
5. ハイドン2番 24回
となっていて、上位3つが接戦。

ところが、1842年からではさすがに古いと思い、1950年以降のデータだけに絞ってみると:
1. ドボルザーク 39回
2. シューマン 28回
3. サン=サーンス 21回
4. チャイコフスキー(ロココ) 16回
5. エルガー 10回/ショスタコーヴィチ1番 10回
となって、やはりドボルザークが一番人気となっていました。

これを見ると、アメリカでもチェロ協奏曲といえばドボコンが(「一曲集中」というほどではないにしても)一番人気、ただしこの傾向は比較的新しく、20世紀後半くらいからの傾向かも知れない、ということが言えそうです。

ちょっと不思議なのはエルガーの演奏回数の少なさで、1842年以来全部でたったの11回。 近年でこそヨーヨー・マが1回、アリサ・ワイラースタインが5回演奏していますが、まだまだ少ない気がしました。 もしかしたらアメリカ人はエルガーのチェロ協奏曲のような曲があまり好きじゃないのかも知れません。

今年の12月にもドボルザークのチェロ協奏曲(指揮クリストフ・ドホナーニ、演奏アリサ・ワイラースタイン、メインは交響曲9番「新世界」)が予定されているらしく、 下記はそのプロモーション映像。

なお、上のデータでボッケリーニのチェロ協奏曲G.482は、グリュッツマッハー版で10回、原典版かどちらか記載のないものが8回、計18回と健闘(?)していました。 この中には1927年2月、オットー・クレンペラー指揮、パブロ・カザルスによる演奏も含まれています。

チェロ協奏曲の50回前後という演奏回数は、ピアノ協奏曲やバイオリン協奏曲に比べてどうなのか?と思って調べてみたら、人気曲の例としてたまたま思い浮かんだチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は168回、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲は210回も演奏されていましたから、 チェロ協奏曲の人気曲といっても、ピアノやバイオリンに比べたら決して多くはないようです。

[追記: ボストン交響楽団の場合はドボコン人気がより鮮明で、1950年以降では:
1. ドボルザーク 77回
2. シューマン 33回
3. エルガー 32回
4. サン=サーンス 19回
4. ハイドン2番 19回
とドボコンがダントツの1位。

創立1882年からすべてのデータでも:
1. ドボルザーク 98回
2. サン=サーンス 70回
3. シューマン 61回
4. ハイドン2番 57回
5. エルガー 32回
となっていました。エルガーがよく演奏されるようになったのは20世紀後半以降、逆に昔は人気だったのにそれほど演奏されなくなったのがサン=サーンス、安定して演奏されているのがシューマン、ということのようです。]

錦織、バルセロナで復帰初戦勝利

[ 2014/04/23 Wed] テニス

錦織圭選手は、バルセロナでバウティスタ・アグート(45位)に苦戦しながら 6-1 4-6 6-3で勝って3回戦へ。先月フェレールとフェデラーに勝ったあと故障で棄権し、デビスカップも欠場した復帰初戦だったので、ひとまずホッとしました。これから5月の全仏オープンまでが過酷なクレーコートシーズン…。

世界ランキング17位の錦織選手は、この大会第4シード。準々決勝に予想されるロブレド(18位)との試合が鍵になりそう。

現在行われているバルセロナの大会のスポンサー、バンコ・サバデル(Banco Sabadell)のインタビュー。錦織選手が英語でインタビューされているのですが、インタビュアーが訳したスペイン語が錦織選手がしゃべったのよりずっと長いような…

バンコ・サバデルといえば、2年前、「第九」のフラッシュモブの“はしり”となったのが、このバンコ・サバデル創立130周年記念キャンペーンでした。

タグ : 錦織圭  フラッシュモブ 

一番聴かれているチェロ協奏曲は

[ 2014/04/21 Mon] チェロと音楽

ボッケリーニのチェロ協奏曲はいい曲の割に聴く機会が少ないのではないか?という疑問から、そもそもどのチェロ協奏曲がどれくらい聴かれているのか?少し調べてみました。

日本全国でこれから今年いっぱい開催されるコンサートで、今日現在ぶらあぼにコンサート情報が登録されているもののうち、 チェロ協奏曲がプログラムにある演奏会は全部で20回あって、その曲別の内訳は:

ドボルザーク 12回
ラロ 2回
ショスタコーヴィチ1番 1回
ヴィヴァルディ 1回
サン=サーンス 1回
ハイドン1番 1回
ハイドン2番 1回
エルガー 1回

やはり最も多いのはドボルザークのチェロ協奏曲(ドボコン)で全20回中12回。ソリストで最も多いのは宮田大さんでドボコン3回。

エルガー(1回)やサン=サーンス(1回)やシューマン(0回)がもう少しあるかと思いましたが、あまりないものですね。 「チェロ協奏曲といえばドボコン」と偏ってしまうのは、聴衆の立場とするとなんとなくわかりますが、いいのでしょうか… ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ムスティスラフ・ロストロポービチ 小澤征爾

ラロの2回というのが目を引きますが、これはN響第1782回定期Cプロ5月16,17日の公演で、ソリストはヨハネス・モーザー。 ショスタコーヴィチの1番は東京藝大第50回定期公演(5月29日)で、ソリストは今年から藝大准教授に就任された中木健二さん。

FM放送などで過去オンエアされた曲と回数なども調べられたらと思いましたが、うまく見つけられませんでした。

[追記: そういえば、チャイコフスキー「ロココ風の主題による変奏曲」もチェロ協奏曲に相当する作品だと思い出してこれも調べたら、今年4回の公演がありました。こちらは、それなりの人気、と言っていいでしょうか。]

コメントをチラッ。

今週の練習

[ 2014/04/20 Sun] チェロと音楽
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ボッケリーニのチェロ協奏曲、1楽章を譜読み。

前回レッスンが終わった段階では譜読みだけでもあと2回...展開部と再現部で1回、最後のカデンツァの部分で1回のレッスンが必要だと思っていたけど、いざ始めたらこの曲がすっかり気に入ってしまって、ぐいぐいと読み進めてしまった。

展開部には3度の重音やアルペジオがあって、なかなか手ごわい。 カデンツァはたっぷり2ページ、時間にして2分余り無伴奏で弾くことになる。

まだ1楽章だけだが、全体として形式のかっちりとした、堂々とした曲でありつつ、チェリストの技巧が最大の効果を上げられるように「よくできた」曲だという気がした。

知れば知るほどいい曲だと思うのに、この曲を聴く機会が少ないのはなぜだろうか? ひとつには、ハイドンの2つの協奏曲と同じ古典派として「かぶる」とみなされているからではないかと思っているのだが…

今週はボッケリーニに時間を多く割いて、オーケストラやアンサンブルの曲にあまり手がつかなかった。

レジリエンス

[ 2014/04/18 Fri] 雑記

17日のNHKクローズアップ現代「“折れない心”の育て方」で「レジリエンス」(resilience,復元力)という心理学で提唱されている概念について。

この言葉を初めて聞いたのは、一昨年のダルビッシュ投手の大リーグデビューのときで、立ち上がりに失点しながら立ち直り、結果的には初勝利を挙げるまでのピッチングをしたのをアメリカのメディアが評して「resilienceを示した」と書いていたのを読んだとき。粘り強さ、修整能力の高さのことだろうけど、そういう言い方があるんだ、と思った。 ダルビッシュ有の変化球バイブルアンコール

スポーツや音楽での「レジリエンス」にはちょっと興味がある。 試合や本番の演奏にはミスはつきものだが、ミスをしても立ち直れることもあれば、それを機にガタガタと崩れてしまうこともある。 大抵の場合、小さなミスで「しまった」と思った後に大きな、本当のミスが来るものだ。

それから、全く違ったレベルで、長年一つのことを続けられるか、それともイヤになってやめてしまうか、というときにもこのレジリエンスが関係ありそう。

番組では、「レジリエンス」のためには、 今がだめでもいつかできると楽観的でいられること、 悪くても自分を過小には評価しない自尊感情と、少しは前進していると思える自己効力感を持てること、 感情のコントロールをしていちいち一喜一憂しないこと、 それから、気持が共有できる人間関係を持つこと…だという。

個人的な経験から付け加えると、「引き出し」がいくつか用意できているとうまくいくことが多い。逆に「これしかない」と思い込んでいるとなかなか苦境から抜け出せない。 そのように考えると、レジリエンスは個人の性格や気質の問題というより、そのような状況に身を置けるかどうかの問題ではないかと思った。

チェロビエンナーレ2014に2Cellosが参加

[ 2014/04/18 Fri] チェロと音楽

biennale2014.jpg オランダのアムステルダムで隔年開催されているチェロビエンナーレ2014が、今年は10月16日から25日まで10日間の予定で開催されるそうで、そのプログラムが発表されていました。

このイベントは毎回、世界中の有名チェリストも参加してコンサートやマスタークラスが連日開かれるチェリストの「お祭り」。今年もマイスキー、ケラス、ソッリマ、ビルスマなど豪華かつ多彩な顔ぶれが揃うほか、何とあの 2Cellos も参加するそう!

2Cellosのふたりは最終日前夜の24日にライブを行うだけでなく、クラシック音楽のチェリストとして研鑽を積んだ二人がロックやポップスの曲を弾く方法について入場無料のワークショップを開くそう…これは聞いてみたいですね。

タグ : 2CELLOS 

トロントのチェリスト

[ 2014/04/16 Wed] チェロと音楽

カナダのトロントで連日チェリストが市内のどこかで演奏するThe Travelling Cellistというイベントが3月から開催されていたことを前に書きましたが、これを記録した公式映像がYouTubeにアップされていました。

サラエボのチェリスト スティーヴン ギャロウェイ このイベントは、小説「サラエボのチェリスト」の元になった、22人の市民が犠牲になった現場でひとりのチェリストが22日間毎日「アルビノーニのアダージョ」を弾いたというエピソードを再現したもので、トロント公立図書館が主催。演奏はトロント交響楽団のチェリストたち。

見て思ったのですが、この曲を公共空間、しかも無伴奏で弾くのは、相当に精神性の高さが求められるというか、緊張しそうですね。

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コメントをチラッ。

松江歴史館

[ 2014/04/16 Wed] ふるさと

松江・出雲の歴史を訪ねる人への発信地、松江歴史館の皆さんの「恋するフォーチュンクッキー」。この撮影にも参加している方からの情報で知りました(感謝)。

正直言ってダンスにはいまひとつ気合いが入ってないけど、館長や市長まで一緒に頑張っているので…。

島根県謎解き散歩

館長の藤岡大拙氏は出雲研究の第一人者で著書など多数。

松江城と堀を隔てて建つこの松江歴史館では、5月に将棋名人戦七番勝負第5局が開催される予定。先週行われた第1局は羽生三冠が制したけど、森内名人と羽生三冠の熱戦が4局で決着つくわけはないと思うので、松江歴史館での対局風景がニュースにうつるのを楽しみにしています。

室内楽四人組のバトル

[ 2014/04/14 Mon] 変なもの

ドイツのハンブルグで音楽を学んだ四人組 Salut Salonのパフォーマンス。

ユニット名はグループで最初に弾いた曲、エルガー「愛の挨拶(Salut d'amour)」から来ているのだそう。

[SlippedDiscねとらぼ経由]

忘れられかけている?ボッケリーニのチェロ協奏曲

[ 2014/04/11 Fri] チェロと音楽

レッスンで新しくボッケリーニのチェロ協奏曲B-durを教えてもらうことになった。

この曲の存在は知っていていたけど、聴いたことはなかったし、弾いたというひとの話も聞いたことがなかった。 聴いてみると、明るく華やかなテーマから始まり、流麗な旋律もあり、チェロの技巧と音域をいっぱいに使う、勉強しがいのある曲だと思った。 何よりR子先生がすすめてくださったのだから、これはもう断る理由がない。

***

この曲について、以前「モーストリー・クラシック」のチェロ特集にあった紹介記事を引用すると:

ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ボッケリーニ:チェロ協奏曲 ジャクリーヌ・デュプレ ボッケリーニ(1743~1805)のチェロ協奏曲変ロ長調は、ハイドンの2つの協奏曲とともに、古典派時代のチェロ協奏曲を代表する存在である。 現在広く演奏されているのは19世紀後半にドイツ人チェリスト、フリードリヒ・ヴィルヘルム・グリュツマッハーによる改訂版で、これはボッケリーニのオリジナルに大幅に手が加えられている。 ボッケリーニの書いた草稿が発見され、オリジナル版での演奏も可能となった後も、この改訂版による演奏が一般的だ。 自由に展開する美しい旋律はチェロの魅力を活かしたもの。 デュ・プレのチェロ、バレンボイム指揮、イギリス室内管弦楽団による演奏が秀逸だ。
(音楽評論家 岡本稔氏 忘れてはならない名協奏曲 モーストリー・クラシック 2012年11月号 p58)

TBS Vintage Classics ボッケリーニ&ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
カザルス(パブロ)

また、ちょうど最近、カザルスが1961年に来日して指揮したときの音源が「発見」されたというニュース[共同 14.03.04]があったけど、この中に入っていたのがカザルス指揮、東京交響楽団の演奏で平井丈一朗さんが弾いたボッケリーニのチェロ協奏曲だった。

***

上の引用にあるようにグリュッツマッハー(1832~1903)が改訂していることから、音源と楽譜を探す上でもちょっと戸惑った。

演奏としてはデュ・プレの他にカザルス、フルニエなど錚々たる顔ぶれがグリュッツマッハー版の録音を残している一方、少数ながらオリジナル版の演奏もある。 ヨーヨー・マには両方の録音がある。YouTubeでこの曲名で検索で出てくる演奏にも2種類がある。

オリジナル版とグリュッツマッハー版とでは、冒頭の旋律こそ似ているけどずいぶん書き換えられている上に、第2楽章アダージョなどはボッケリーニ他の協奏曲の2楽章から転用されている。 ようするに、まるで「コピペ」して作った全く別の曲なのだ(ただし、別の“名曲”)。

(ちょっと、フィッツェンハーゲンがチャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」を書き換えてしまったという話を思い出すけど、 ボッケリーニとグリュッツマッハーは、約百年の時を隔てているわけだから、少し事情は違う。)

出版されている楽譜はグリュッツマッハー版が多いが、オリジナル版もある。Breitkopfからはオリジナル版とグリュッツマッハー版と両方が出版されているからややこしい。 このあたりの事情を解説している楽譜専門店アカデミアの記事があった。→エディション・ヴァージョンの違い ボッケリーニのチェロ協奏曲

今回は水色のIMC版を購入した。編者レナード・ローズがわりあい親切にフィンガリングをつけてくれている。なお、IMSLPにあるのはグリュッツマッハー版のみだった。

それにしてもこの曲、近年演奏される機会が少ないのではないだろうか?演奏会の曲目でも新しいCDでもあまり見ない気がする。その理由らしきこともいくつか思い浮かんだのだが、それはまたもう少し色々なことがわかったら。

タグ : チェロレッスン